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日々、思考回路を暴走中。

文学を勝手に計算する――アーノルド・ローベル作『おてがみ』

 

だいすきな物語の世界観を壊すつもりはない。

だけど、どうしても気になることがある。

今日は欲望を開放して、気になることを思い切り計算してみようと思う。

 

今日の計算:

アーノルド・ローベル作『おてがみ』より

がまくんとかえるくんの家の距離

 

『おてがみ』は、小学生のとき国語の教科書に載っていて、すごく好きだった。

がまくんとかえるくんのお話。

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

小2の娘の国語の教科書にも載っていて、音読の宿題で読み聞かせてくれる。

そして、聞けば聞くほど、ある部分が気になる。

 

このお話を知らない人のために、かいつまんで状況を説明すると、 

・がまくんとかえるくんは親友。

・がまくんは誰からもお手紙をもらったことがなくて、いじけてる。

・自分には手紙なんて来るわけないと思っているがまんくんにとって、「郵便を待つ時間」はとても悲しい。

・がまくんの家にあそびに来ていたかえるくんは、その様子を見て、自分ががまくんに手紙を出してあげよう!と思い、大急ぎで自宅に帰って手紙を書く。

・書いた手紙をともだちのかたつむりくんに託し、がまくんの家に届けてもらうよう頼む。

・かえるくんはがまくんの家に戻り、手紙が届くのをふたりでいっしょに待つことにする。

・がまくんにとってずっと悲しかった「郵便を待つ時間」が、とってもしあわせな時間になる。

 

ハッピーエンド✨

 

と、ざっくりまとめるとこんな感じだけど、気になるのは、やはりここ。

 

「急いで手紙を書いたのに、なぜカタツムリに託したの」

 

手紙が届く前に先回りしてがまくんの家に行き、ふたりが並んでしあわせそうに手紙の到着を待っているのはとてもすてきなんだけど、手紙が届いたのは四日後。

 

しかも挿し絵によると、手紙を待ち始めてから届くまで、ふたりとも同じ服装のまま玄関に座ってるみたいなんだけど、

 

え、四日間、ずっとそうしてたん?

 

かえるくんが「かたつむりくんに頼もう」と思った理由はわからないけど、カタツムリでも行ける距離だと考えてる時点で、かえるくんの家とがまくんの家は結構近いんだろうと思う。 

でも、四日も待つことになったのは、かえるくんにとっても誤算だったはず。

 

実際のところ、カタツムリの足(?)で四日かかるって、どれくらいの距離なんだろう。

ということで、ふたりの家の距離を計算をしてみることにした。

 

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「ふたりの家の距離」は「かたつむりくんの移動距離」でもある。

移動距離の計算は「距離=速さ×時間」だから、「速さ」と「時間」がわかればいい。

計算に必要な数値はその2つだけ。

 

<速さについて>

カタツムリの種によって速度の違いがあるだろうけど、挿し絵だけではカタツムリの種まではわからないし、そもそも種ごとの速度のデータが充実してないので、ネットで見つけた情報を使うことにした。(引用元は記事末尾)

 

1秒間に2ミリも進めない。100メートル完走するには2時間4分だ。

 

2時間4分で100mということは、1時間あたりにすると約48mになる。

これにもとづき、かたつむりくんの歩いた速さは時速48mとする。

 

<時間について>

到着までに要した時間は「四日」と書かれているけれど、カタツムリがストイックに不眠不休で四日間歩き続けるとは思えないので、1日当たり何時間くらい活動するのかを調べることにした。

すると、衝撃の情報が。

 

カタツムリは、30時間以上活動し続け、その後、13~15時間以上の睡眠を7回ほどに分けて取る。

 

24時間周期で生きてなかった!

 

昼と夜があり、24時間で明暗がひとめぐりするこの地球で、24時間周期を無視して生きてるなんて。 

カタツムリって、太陽さえも手を出せない生き物なのか。

自由すぎる。

 

そんな感じでカタツムリが自由すぎてややこしいので、次のように仮定することにした。

・生活リズムは、活動時間32時間・睡眠16時間の48時間(=ぴったり2日)周期とする。

・ご飯を食べたり休んだりもするだろうから、1回の活動時間のうち、歩いた時間は30時間とする。(⇨2日で30時間歩くということ)

・手紙を預かってから届け終えるまでの時間をぴったり4日(=96時間)とする。

 ・かたつむりくんは、活動を始めた直後に、かえるくんから手紙を預かったとする。

 

この仮定にもとづき、「四日」のうち、かたつむりくんが歩いた時間は60時間とする。

 

<計算結果>

以上より、かたつむりくんが四日間で移動した距離は次のようになる。

 

   時速48m×60時間=2880m

 

手紙をもっていたので普段より歩くスピードが落ちていた可能性もあるし、逆にヤル気を出してめっちゃ急いだ可能性もあるし(実際、お話の中で、かたつむりくんは「すぐやるぜ!」と意気込みを述べている)、そこらへんの細かいところはわからないけど、がまくんとかえるくんの家の距離は、ざっくり3㎞弱だと言えそうだとわかった。

 

3km弱って、カタツムリに頼むにしては結構遠いと思うので、かえるくん、次からは他の動物に頼むといいね。

 

あと、計算してみて気づいたけど、3km弱って、かえるくんにとってもがまくんの家は結構遠いと思う。

だけど、かえるくんは、その遠さをぜんぜん感じさせない。 

今までは「お手紙を書いてあげて、かえるくんって、やさしいな」としか思ってなかったけど、この計算を通じて、かえるくんのがまくんへの愛の深さを改めて実感できた気がする。

 

 * * * * * * * * *  * *  

 

ところで、わたしのこの仮定でいくと、すごくおかしなことになってしまうのですが、みなさん気づいたでしょうか。

 

この仮定でいくと、かたつむりくんは、

目覚めた直後に手紙を預かる→32時間活動する→16時間寝る→32時間活動する→16時間寝る→目覚めた直後に手紙を渡す

ということをしているのですが、手紙を渡す前、どこで寝てるでしょう?

 

そうです、この計算だと、かたつむりくんは、がまくんの家の前まで行ってから、手紙をもったまま16時間寝てる!

 

だったら寝る前に渡せよ!!という話になるので、ちょっと仮定がいまいちだったなあと反省。

 

カタツムリはつねに全力で歩くのか?移動は直線なのか?とか、考え始めたらキリがない。

まあ、だいたいの距離の算出が目的だったので、かたつむりくんの行動に違和感はあるけど、こんなもんでよいかな。

 

物語には夢があり、夢には、理屈では語れない美しさがある。

その美しさを測ることはできないけど、出てくる数字は計算できる。

物語の美しさを大切にしながらも、気になることはどんどん計算していきたい。

「100万回生きたネコ」の平均寿命とか。

 

計算できて、すっきりした。たのしかった☆

 

(参照したサイト)

☆ナショナルジオグラフィック「第10回 生き物のスピード競争」

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20121012/326695/?P=3

 

☆Amebaニュース「人間とは違いすぎる!?驚くべきカタツムリの睡眠」

https://news.ameba.jp/entry/20151207-437