『南瓜とマヨネーズ』
ひさしぶりに映画をみた。前から見たかった『南瓜とマヨネーズ』
地味で、静かで、やりきれなくて、結論は出ないし、オチもない。始まりも終わりも切りっぱなしみたいな映画。わたしはかなり好きでした。
予告では、現在の彼氏(せいいち)と過去の恋人(ハギオ)のあいだで揺れてる女性(ツチダ)の恋愛感情メインの映画かと思ってたけど、お話の中心は、たぶんそこじゃなかった。
大切なものを大切にしたいだけなのに、必死になればなるほど自分も相手も追い詰めて、お互いの関係が、望んでいたのとは違う形に変わっていく、ツチダとせいいちのお話だった。
ツチダにとってのせいいちも、せいいちにとっての音楽も、近すぎて、大切すぎて、思いが強すぎて、バランスを失ってた。2人とも、やりきれなさのなかで生きていた。
大切すぎて、中途半端には向きあえなくて、全力でぶつかるか、それができないならすべてを捨てたくなる、そういう両極端な存在、わかる。
あきらめたいのか、あきらめたくないのか、自分で自分の正直なきもちがわからなくなる感覚、わかる。
初めから最後まで、せつなくて、さみしかったから、ラストのせいいちの歌に、心が、ものすごくゆるんだ。やさしくて、おだやかで、あたたかい声。
この映画を見たいと思ったのは、雰囲気に惹かれたからだけど、音楽がやくしまるえつこさんだったのも大きい。やくしまるえつこさんといえば、「デザイン あ」の『やじるしのうた』のお姉さん。
ラストの歌は、せいいちの声で聴くのもいいけど、やくしまるえつこさんのカバーも、とってもよかった。
わたしの好きな映画は、この10年、ずっとふたつしかなかった。『メゾン・ド・ヒミコ』と『スカイ・クロラ』
『南瓜とマヨネーズ』は、このふたつには及ばないけど、これからはこの作品も「好きな映画」に数えると思う。
いい映画に出会えたなあ。
ちなみに劇中に南瓜もマヨネーズも不在でした。
「あの頃お前といてもぜんぜん楽しくなかった」「でも今日は楽しかった」っていうハギオの言葉が、ツチダとせいいちの「これから」のヒントになるのかな。
ほんとはうるさいくらいに思いのたけを述べたいけど、ネタバレするのでこのへんで。